今回のラリーは、ラリーストなら誰でも憧れると言われる、モントレーです。
実は私、モントレーにエントリーするのは初めてです。(昨年はポイントの関係で、エントリーしませんでした)
ラリーストの憧れとされるモントレー、どれだけ走らせてくれるのか、楽しみです。
しかし・・・・・レキ前日、問題が起こりました。
私の仕事の都合がつかず、レキに参加できなくなったのです。
それが分かったのが24時すぎ。会社から上原さんに電話して、レキには上原さんだけが行くことに。
初めて出るラリーなのに、レキに参加できないなんて、思いっきり不利です。上原さんに申し訳ない気持ちでいっぱいですが、プライベーターである私たちは、仕事をしなくてはラリーはできません。
悔しいけれど私にできることは、明日、なるべく早く仕事を終えて、現地に入るしか他にありません。
【9月26日(金):レキ当日】
仕事をしていると、上原さんからばんばんメールが入ります。
「すげえ!『まむし注意』とか書いてる看板があるぞ!絶対リタイヤしたくないな」
「誰もが俺を見てびっくりするぜ!1人でレキやってるのって俺だけだ!!レキは順調だぜ!」
決して大変じゃないなんてことはないはずだけれど、少しほっとしました。
ごめんね。明日、がんばります・・・。
漸く仕事を終え、上原さんと合流。
「俺、ノート作っといたから写したら」
「うん、ありがと。・・・・うっ。よ、読めねえ・・・」
「ううむ・・・俺が見ても読めないな(爆)ちょっと、思い出しながら読みあげるよ」
せっかくノートという形になっているのに、これをまた上原さんが読み上げ、私が書き取るという、
レキと同じ形式になってしまいました(笑)
全てのノートを読み上げ終わったときには、上原さんの声は枯れていました。ありがとう、ごめんね・・・。
【9月27日(土):第1ステージ】
ついにラリー本番です。
前日まで仕事でばたばたしていたため、ちっともラリー気分になりません。
おまけに、初めて出るラリーなので、緊張してきました。
ううう、緊張する・・・
まずは、サイクルスポーツセンターでのSSです。
ここは去年、ダンナのサービスとしてついてきたときに、ギャラリーをした思い出があります。自転車が走るというのでもっと小さなコースを予想していたのですが、道幅は広いし、起伏はあるしで、なかなかに面白そうなコースで驚いた記憶があります。
さて、RX-7はどれだけ速くなったのか・・・・?
SS1(約4.1km)
3・・・2・・・・1・・・スタート!!
スタート後、いきなりのストレートです。いっけええええーーーーー!・・・あれ?
お、遅い・・・・改善されていないっ(涙)!
せっかくのストレートも、広い道幅も、RX-7の良さも上原さんのドライビングの良さも、これじゃ活きません(涙)
もどかしい!悔しい!
「踏めっ!踏めええええっ!」
上原さんの横に乗って、「踏め」と言ったのはこれが初めてではないでしょうか。
言ったとしても、側溝や土手に落ちたときに「(復帰のために)踏め!」と叫んだことがあるくらいです。
「踏め!」と叫ぶ=「どうなってもいいです」という公式が成り立ってしまうような上原さんに対して、「踏めえっ!」
と叫ぶことはそうそうないでしょう。ある意味とても貴重な経験になるのかもしれません(笑)
途中、4速全開ドリフトで「あわや」というシーンもありましたが、なんとかゴール!
「前ゼッケン何秒っ?」「40秒!!」
・・・・12秒も離されてる。
マシンはぜんぜん出来上がってない状態だし、そう考えるとこのタイム差は当然なのかもしれませんが、何よりも1本目からこのタイム差では、精神面に影響が出かねません。
悔しい・・・・
そんな私の心配をよそに、上原さんは「おっ、ブーストが前回よりも0.5多くかかるようになった♪」などと喜んでいます。
うむむ・・・前向きにがんばるしかないな。
SS2(約8.7km)
上原さんの作ったペースノートで走る、初めての林道SSになります。
見通しの良いサーキットと違って、ノートの読み上げのミスは致命的となります。ちょっと緊張・・・・。
「よし、がんばろう!」「おう!」
3・・・・2・・・・1・・・・・スタート!!
くう・・・立ち上がりがきつい!エンジンふけろっ!
自分が全く見ていない林道なので、ノートを合わせるのが結構難しいです。RX-7の走りにも慣れていないので、
タイミングを合わせるのにも苦労しつつ、必死にノートを読み上げます。うん、今のところ、ノートは問題なさそうだ。
上原さんも、立ち上がりの遅いRX-7を扱うのに苦労しています。私のノートの読み上げタイミングで、立ち上がりを意識した走りにできれば・・・・そのとき!
「5L、3.5R!!」
3.5Rが見え、ブレーキングポイントにさしかかったとき、予想していたのと違う感触が・・・・滑ってる!!
あっ!!と思った時にはもう、3.5Rのコーナーに、まっすぐに突っ込んでいました。
上原さんはブレーキを踏んでいるはずですが、全く手ごたえがありません。『泥に乗った!』頭の中で確信しました。
目の前には電柱と木・・・・。とっさに体を軽くかがめて、衝撃を吸収する体勢をとりました。電柱に突っ込むと、きっとかなりの衝撃があるはず・・・私はいつも(いつもって・・・)、突っ込むときは最後まで前を見るようにしています。
どこからどんな風に刺さるのか。それは、自分の身を守るためにも、コースに復帰するためにも、必要なことだと思うからです。
ほんの数秒でしたが、私の目には、電柱と木がどんどん近づいてくるのがはっきりと見えていました。
「くる!!」
一瞬、体が衝撃で前にのめり、顔を上げると、右フロントには電柱、左フロントには木・・・フロント周りがぐちゃぐちゃになっているのが分かりました。
思ったより衝撃は軽かったけれど、マシンへのダメージがどれだけあるのかが分かりません。戻れるか?戻れないか?
「バックして!復帰してっ!」上原さんがエンジンをかけて、バックギアに入れ、アクセルを踏み込みます。
「・・・・・だめだ!出らん!!三停板!!」
慌ててドアを開けると、強い抵抗があって、「バキッ」という音とともにドアが開きました。
見ると、ドアの高さまで土手があって、ひっかかっていたようです。そっか、それで思ったより衝撃なかったんだ・・・。
そんなことを冷静に考えながら、三停板を持って、手前コーナーに走ります。
数台が無事に通過するのを見送って、ほっと一息つきました。
ふと、振り返ってマシンを見ると・・・・
泥の上に、まっすぐに滑った跡が残っていました。
「これじゃブレーキ効かんわな」
「見事に乗ったねー」
こうして、あんなにばたばたしてまで出走した私たちのラリーは、わずかSS2の2km地点をすぎたあたりで、終わりとなってしまいました(涙)
応援してくださった皆さん、手伝ってくれた皆さんには、本当に申し訳ない結果となってしまいました。
ごめんなさいm(_ _)m
ちなみに、このリタイヤの後・・・・
オフィシャルに、「この道はまた使いますから、2ステで全車通過するまでここにいてください!」と言われ、私たちはお昼ご飯にもありつけず、上に着る上着もなく、えんえん4時間以上も、森林浴を楽しむこととなりました。
おかげですっかり、仕事の疲れがとれました(笑)
(写真は、RX-7のボンネットでお昼寝する上原さんです。)
さて、毎回のおまけ。
「そうだ、ダンナにリタイヤ報告しなくっちゃ」(ダンナは今回エントリーしていませんでした)
「おう、そうだ!ついでに積載で迎えにきてもらおうぜ!」
プルルルル・・・・・
「あ、もしもし?あたし。あのね、今、リタイヤしちゃった。でね、自走できんけんね、積載で迎えにきてえー」
「・・・・ま、まじですか!?」
次戦は北海道、上原さんお得意の、オールダートです!
次こそ絶対絶対、絶対勝ちます!!
【最後に】
上原さんの参戦レポートにもありましたが、このラリーで2駆Bクラスの大竹選手が、競技中のクラッシュにより、亡くなられました。
私が全日本に上がったときからずっとエントリーしていた方で、私も関東の選手を紹介してもらったことがあったりと、お世話になった方でした。
ラリーを知らない人は、主催の方法に問題があったとかコースの状態がどうとか言う人もいるようですが、そのような問題があったとは思っていません。もちろん、クルーの安全体勢にも問題があったとは聞いていません。クルー2人にとっても、私たちラリーストみんなにとっても、本当につらく悲しい、残念な事故でした。
ラリーというのは公道を使う競技で、当然、コース外にはさまざまな障害物があります。けれど、「ラリー=危険」というわけではないと思います。
ラリーに拘わらず、何をしていても、あるいは何もしていなくても、何が起きるかは誰にもわかりません。
私は、「これは危険だからやらない」のではなく、「いつ何が起きたとしても、後悔しないように、人生とラリーを楽しみたい」と思っています。
そのために、できる限り安全性を高めたマシンを作り、信頼できるドライバー(?)と組んで、最善の努力を心がけています。
この事故で、ラリーというものが誤解されないことを祈っています。
大竹選手のご冥福を祈りつつ・・・。